その痛み、もしかしたら虫垂炎かも!?「外科医が経験した虫垂炎のはなし」

マンガ

こんにちは!Dr.チャッピーです。

外科医が出会う疾患で最もポピュラーな病気

「虫垂炎」

についてお話させていただきたいと思います。

このブログでは、はじめにお話ししましたように

病気をみんなに知ってもらって人生を快適に過ごしてもらいたい

自分のマンガを様々な方に楽しんでもらいたい

が目標です。

  • おなかの痛みが続いているけど、普段の痛みじゃない…
  • 虫垂炎になったけど、手術ってどんな感じなの?

そんな悩みを解決する一助になればよいかなと思います。

はじめの自己紹介です。良ければ読んでください。

虫垂炎はみぞおちの痛みで出現→右下に移動する痛み

虫垂炎は一般に盲腸と呼ばれますが

盲腸と虫垂は部位が微妙に異なります。

赤丸が「虫垂」青丸が「盲腸」と呼ばれる臓器です。

イメージとしては

「東京ディズニーランドは千葉の浦安にあるけど、東京と呼んでる」

そんな感じですかね。(例えがまずかったらすみません)

発症はみぞおちの痛み(心窩部痛)から始まり、右下腹に移動するような痛みが起こります。

例えば

朝から何となく痛くて、様子を見ていたけどなかなか痛みがとれない

お昼を食べてから何となくむかむかするけど、痛みが段々右下腹に移動してきた

こういう症状で来院される方が多いです。初期は内臓痛といって全体に鈍い痛みが出現し、炎症の部位である虫垂に体性痛といって刺し込むような鋭い痛みが出現します。

虫垂炎の治療は手術または抗生剤治療

治療は手術または抗生剤治療

虫垂炎の治療は手術または抗生剤治療となります。

たいていの虫垂炎は抗生剤治療で治ることが多いです。痛みが強い場合は手術を行うことをお勧めします。理由として再発する割合が30~40%くらいあると報告されているからです。

急性虫垂炎保存的治療症例の約 30% が再発し,再発症例の 60% が虫垂切除手術を受けていた.18 歳以下の若年症例,来院時白血球高値症例および CT 画像上虫垂径 9mm 以上に腫大した症例や虫垂周囲脂肪織への炎症波及を認める症例では,急性虫垂炎保存的治療後の再発が高率であることを念頭において治療に臨むべきである

出典:向田 和明「保存的治療を行った急性虫垂炎の再発予測因子に関する検討」 日本消化器外科学会雑誌.2011;44(11):1347-1354 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjgs/44/11/44_11_1347/_pdf 

再発症例が多いことと、虫垂は痕跡器官と呼ばれ、役割のない臓器であるので外科医は切除をお勧めしています。

どうしても、今は手術を受けたくないという方には抗生剤で治療して、後から予定を立てて手術をすることも可能な場合もあります。

最近は腹腔鏡手術が多い

腹腔鏡手術が多いです

最近の虫垂炎の手術は腹腔鏡で行うことが多くなっています。

基本的には3か所の傷をつける術式とおへそだけの傷で行うこと術式があります。

3点式と1点式(単孔式)

病院によって異なりますが、美容的な観点からみると1点式(単孔式)が良いと思われますが、臍を3点式よりも少し大きく切開する必要があるので、術後の傷の痛みは1点式(単孔式)の方が強いと言われています。また単孔式の方が難易度が上がります。(なれの問題もありますが)

個人的には3点式であっても1㎝弱の傷なのでほとんど目立たなくなることと、パンツのラインに隠れるので3点式でもよいと思います。

もちろん虫垂の直上の皮膚を5㎝ほど切る方法も行うことがあります。手術の視野が悪いため、私の経験としては腹腔鏡手術がほとんどです。

入院期間は4~5日 炎症が強い場合は長期入院も

虫垂炎で手術をした場合、標準的には4~5日間の入院になります。

手術をしないので抗生剤治療をした場合にも4~5日ほど入院することがあります。(病院によって入院期間は様々なので、おおよその目安です。)

一口に虫垂炎と言っても、発見が遅れて炎症が周囲の臓器まで拡がっているものや、虫垂穿孔(虫垂に穴があいてしまったもの)、虫垂の周りに膿をつくってしまったもの(膿瘍形成と言います)もあり、上記のような状況では入院期間が長引き、場合によって1か月近く入院する症例もあります。(もちろん少ないですが)

高齢者は発見が遅れることも…

高齢者の方で、虫垂炎がひどい状態になってから来院されることがあります。原因としては

  • 痛みの自覚が弱い
  • 病院に行き渋る(これくらいの痛みでは病院にいってはいけない)
  • 症状が非典型的(なんとなく調子が悪い など)

などが挙げられます。炎症がひどい状態で来院された場合は手術治療が難しく、長期入院となってしまう可能性があったり、盲腸ごと切除したり盲腸の周りの腸を全部切除(回盲部切除)する手術を行わなければならない可能性も出てきます。(傷も大きくなります)

また、たまにあるのが、開業医さんで腸炎(胃腸かぜ)と診断されて良くならず、1週間くらい経ってから紹介を受けることもあります。正直同じような症状で腸炎であることの方が多いので開業医の先生の対応が間違っているわけではありません。大半の方が数日見たらよくなります。

覚えておいていただきたいのは、

症状が持続する・改善がないなら早めに再度相談していただく

これに尽きると思います。虫垂炎も早期発見で合併症もなく治療することができる可能性が高くなりますので、もし「虫垂炎かも…」と思ったら迷わず相談してください!

まとめ

  • 虫垂炎はみぞおちから右下腹に移動する痛み
  • 治療は手術また抗生剤治療
  • 腹腔鏡手術が多くなってきている
  • 入院期間は4~5日ほど
  • 状況によっては長期入院になる怖い病気
  • 早期発見が大事

いかがでしたでしょうか。ざっくりとした内容ではありますが、皆様のお役に立てれば幸いです。他にも外科疾患について知り得ることはお伝えしていきたいと思いますので、引きつづき更新していきたいと思います。

最後まで読んで下さりありがとうございました。

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